君と見た夢
空を仰ぐと思い出すことがある。
僕の記憶の大部分を占める、キミのこと。
○君と見た夢○
空を仰ぐと思い出すことがある。
キミは朝も昼も夜も、この空の下で僕に将来の話をしていた。
「燕、私ね必ず医者になってみせるから」
「あぁ……」
「必ず医者になって、こことは違う空を見てる人を救うの。
肌の色が目の色が髪の色が違うとしても笑いあえることを証明してみせる」
「……あぁ、そうだな。お前なら……きっとできるよ」
ここは日本、人々は髪も目も黒い国。
その中で彼女は異色だった。
亜麻色の髪。青い目。誰よりも綺麗でいて、異端だった。
そのことで涙を流すたびに、自分と同じ思いをする人々のことを思った。
「…まだ、気にしてるのか?」
「……そりゃぁ、色んなことされてきたからね。
だけどね、私がこの夢を見るようになったのは燕のおかげよ」
燕だけは、蔑視を向けない。興味本位で近づかない。
彼女はそのことに、少なからず救われていたのだ。
「ねぇ、燕……私は医者になって、貴方が言ってくれた言葉をもっと多くの人に伝えたい」
「俺が言った言葉……?」
「『人の本質を見ろ。見た目などあてにならないから』」
「それって良い言葉なのか…?」
「あら、私は大好きよ。容姿は関係ない。中身が大切だ、ってね」
「お前が好きなら、それで良いよ」
「うん、ねぇ燕」
「…………」
「ありがとう……本当に、ありがとうね」
彼女はこの言葉を最後に、大きな街へと引っ越して行った。
人づてに彼女が医者になったとは聞いたが、その後のことは知らなかった。
ただ、ふと空を見ると彼女が話していた、大きな夢を思い出す。
幾月もたったある日、エアメールが届いた。
写真の上には、昔から変わらない少し拙い文字で書いてあった。
Dear 燕
違う空を見ていても、貴方とは繋がっている気がするわ。
ねぇ、燕……ありがとう。
『人の本質を見ろ。見た目などあてにならないから』
この言葉は、私の決め台詞になったから。
From リン
相変わらず変な奴だなぁ、と呟きつつも少し涙目になってしまった。
なぁ、リン
俺も感じているよ、たとえ違う空の下にいても。
もう少し時がたったら、同じ空を見に行くのも悪くないと思ってるから。