耳に残るは君の声







離れやしないか、離れやしないか。

不安、積もる。止まない雨の如く。

心、からっぽの中身。瞳、いっぱいの涙。

積もり積もった、寂しさ、切なさ。

離れやしないか、離れやしないか。






離れやせん、離れやせんよ。

だから、泣かないで。








泣かないで。お願い。



















耳に残るは君の声。





笑い声、泣き声、呻き声、喋り声、その他諸々。


あの頃は何を聞いても思わず笑ってしまっていた。


すると君は少し頬を膨らまして、何よ、って怒って。


ねぇ、知っていたかい?僕はそんな怒った声でさえ、大好きだったんだ。

















自分で命を立つことが、どれだけ愚かなことか君は知らないはずはない。

痛かっただろ?寂しかっただろ?

僕が後ろを歩けば、離れやせんか、と君はいつも振り返っていたね。





なのに、最後は僕を置いてった。置いてったんだ。











よく一緒に歩いていた川辺を一人で歩いてみる。

あの日から少し朦朧とした意識を、取り戻すために。

だけどどんなに外を練り歩いても、川に石を投げ波紋を作ってみても。

心がなかった。





あれ、落としてきたっけ。

















君の命日。皆は"君"よりも僕を、悲しそうに見つめる。

そんな風に見つめないで。お願いだから。

僕は決して消えたりしない。大丈夫。





ただ、きっと幾つもの時が過ぎて僕がじいさんになっても…

この意識が鮮明になることもはないし、君の声が消えることもない。







嗚呼、寂しくはないよ。苦しくはないよ。



今日も明日も、鮮明なのはあの日までの記憶と、君の声だけ。



それが少し、切ないんだ。

















君を忘れる?そんなことできるわけ、ないじゃないか。

































(耳に残るは君の声。これからだって離れやせん、離れやせんよ。ずうっと、永遠に。)