君のいない世界なんて







何よりも怖いことは?と聞かれたら何て答えようか…。

幽霊?忘却?願望?欲望?

違う。私は…。





いつだって貴方の後ろを着いて歩いた。

全ての恐怖から私を守ってくれる、そう信じていた。

確かに貴方の手は、両親のそれよりも暖かくて。

誰よりも私にしっくりとくるような、そんな手だった。

きっと私さえ離れなければ、一生傍にいてくれただろう。







離れやしないか、そんな不安を持つようになったのはまだ小さな頃だ。

彼はあまり表情に感情を出したりはしないが、小さい頃から信頼の篤い人で。

そんな風だから、周りには不思議と人が集まる。

その風景は、私だけを外に追いやっているように感じた。

貴方と、貴方に群がる人と、風景と。

見えない壁を挟んで、私。







貴方にそれを言えば笑って否定してくれる。

離れやせん、離れやせんよ。離しや、せんよ。と。

ずっと、ずっと私が安心するまでそう手をぎゅっとしてくれた。





私はずるい。



貴方の性格を知っているのに、その言葉を唱え続けたのだから。







「離れやせんか、なぁ離れや…せんか」











私の想いは重く、貴方の心を埋めているようで後ろめたい。

だけどその反面、優越感を感じその袖を掴む。









少し大人になって、彼から離れようと彼を作った。

私は必死でその人を掴み、離そうとしなかった。

結局彼は逃げて、私は貴方の元へ。







そのときに気づいてしまった。

傍に私がいること、それは貴方の為にならないと。

深く愛そうとした彼といても、思うのは貴方で…。













貴方にもしものことがあったら私は我慢が出来ない。











貴方のいない、世界なんて想像できないの。









先に逝きましょう、貴方を待つ時間は好きだから。













ねぇ、私は貴方の幸せを願っているだけ。

それだけなの。















もう、世界は見えないけれど。































最後に見えた貴方の表情が、私の瞳に焼きつく。

















「離れやせんよ」































最後の表情、今までで一番の悲哀。































(それでも私は、いつか来る貴方のいない世界を愛することはできないの)