夕焼けに染まる背中







人が考える以上に、5年の月日は長い。

例えば久しぶりに会った君の髪はあの頃よりも長く、背につきそうなくらいになっていた。





後ろ姿がゆっくりと夕焼けに溶けて、あの寂しげな微笑を浮かべた君が消えていく。

……そんな夢を何度も見続けている。
目を覚ました瞬間、思い知らされては涙を流した。

『君は、いない』……と。

それでもまた5年後に思いを向け、涙を拭い一人歩き続けるんだ。




初めて会ったのは5歳の時。

あの頃からどこか"ませ餓鬼"だった俺は、友達と遊んだ帰り、ふと見た夕日に見惚れいていた。
あまりにも綺麗なオレンジ色が作るグラデーション、思わず土手に座り込んでじぃっとじぃっと見つめてみる。
どれくらいの時間がたっただろうか…ふっ……と隣に人の気配を感じて、横を見ると年端の変わらない女子が座っていた。
俺は突然のことにびっくりして


「誰だお前ッ!!」


ってありったけの声で叫んだ。すると拍子抜けするくらいあっさりと、「空良」と答えた。
ゆっくり微笑むとまた夕日を見つめ始める。それが君。
変なやつだと子供ながらに思ったけれど、不思議と嫌な感じはしなかった。
それからは2人で夕日を見ながらぽつりぽつりとお互いのことを話すと、同い年だと分かった。



「明日も会える?」



他の子供とは違う大人びた雰囲気が気に入って、別れるときにそう聞いたら空良は何も言わずに微笑んだ。








理由はわからないけれどその笑顔が無償に切なかったことだけは、今もまだ鮮明に覚えている。












(夕日が綺麗な日、僕らは出会い……別れた。)